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サバイバーとは、ある種のエピソード記憶の塊が自分の現在の生活にいろいろな影響を及ぼしている、ということを認知した人のことです。
私が今このようであるのは、これこれこういう心的外傷のためである。-------「このような」というのは、大体ネガティブなことで、このように「みじめな」、「貧しい」、「不幸だ」などで、一言で言うと、「生きにくい」と言うことです。
これを認知した人がサバイバーです。
その特徴は、まず心の病気です。
体の病気は、それこそ心身症全般です。ほかに性交疼痛のように、セックスに絡んだものもありますし、四肢の麻痺、現在では身体表現性障害と言われるものや、一連のアレルギー性疾患などもありえます。
心のほうは、抑うつ、無気力というものが多いのではないでしょうか。
また、一連の解離性障害を生じていることが多い。
解離性の健忘、遁走、離人症。14歳から16年間、離人症が続いている例もあります。
それに解離性同一性障害=多重人格。
このうち、健忘は抑圧によるものもあります。
ただ、抑圧や解離は一種の心理的防衛です。なので、これが起こること事態を病気と言っていいかどうかはわかりません。
そういうわけで、記憶や記銘の障害が起こっているのがサバイバーの特徴です。
人生のどこかの時点を覚えていない、あるいは思い出せても、それが自分の体験のように感じられない、ということが認められる場合が多いのです。

近年の研究で、海馬とその周辺部分が長期記憶の中枢であることが、徐々にはっきりしてきました。
※余談
↑の図で名前が書いてあるのは、脳の中でも発生的に古い、「大脳辺縁系」と区別される部分の詳細なものです。
灰色の部分は、脳の中でも比較的新しく発生した「大脳新皮質」といいます。
大脳辺縁系は、生命維持に必要な本能的な欲求、情動などをつかさどり、大脳新皮質の働きである理性や知性がその欲求をコントロールし、ちょうどこの二つで人間らしい行動がとれるのです。
「私」とは、「私についての記憶」のことですから、「自己同一性」の中枢ともいうべき部分がこの海馬周辺領域なのです。
「現実」からの刺激は、この海馬体の神経細胞で処理されることによって顕在化された長期記憶(30秒以上保存された記憶)ないし、遠隔記憶(数日以上保持された記憶)になります。
しかし、遠隔記憶になったものを消す動きもあります。
記憶を消す作用には、大きなものが二種類あって、ひとつは「抑圧」、もうひとつは「解離」です。
解離や抑圧は、一度遠隔記憶に取り込まれたものが待たなくなるので、記憶が「消えた」あるいは「薄れた」といったほうが正しい。
人間の人生の大部分は、記憶するに足りないと体が思って捨ててしまったもので構成されています。
むしろ覚えているももののほうが、回想の反復などの特殊な工夫によって、ようやく記憶として残されるわけです。
そしてこのようにして覚えているものの連続がその人の考える、「私と言う人格」と言うことになります。
この記憶はまた、後の体験やその人の都合によって加工され、記憶の内容なるものも変わって行きます。
行為の障害としては、特に子供虐待が多くみられます。
これは、投影性同一視という規制がかかわっていることもあります。
投影性同一視の例を挙げます。
---自分の娘がよく寝込んでいたりするのを見ると、むらむらと怒りがわいてきたりする。
これは性的虐待、特に親からの性的虐待を受けていた人によく見られます。
いつも緊張していなくてはいけない、いつ怖い目にあうか分からないので、夜はぐっすり寝てはいけないと思って子供時代を過ごしていた人は、ぐっすりと安心しきって寝ている娘を見ると、「危ないじゃないの、あなた!そんなに寝ちゃっていいの?!」と言いたくなってしまう。
同時に自分の過去の傷がよみがえって、ものすごい怒りになり、たたき起こしてしまう。
実際、このようなエピソードをきっかけにして、親からの性的被害の回想が起こってきた人がいます。---
自分の子供時代を、自分の子供に投影するわけです。
それから、当の本人は気づきにくいけれど、時間障害。
心的外傷を受けたときには、頭が真っ白になって、現実の取り込みそのものが鈍くなっていますし、その後に回想すると恐怖や嫌悪感が高まりますので、回想を抑制しようとする。
そのために遠隔記憶としての取出しが困難になってしまうのです。
どんなことが起こったかはぼんやり覚えていても、いつどこで、たとえば夏だったか冬だったとか、午後だったか朝だったかは忘れてしまっていたりします。
あるきっかけで、---例えば父親の死に以後が支配されてしまい、ずっと放心状態が続く---この例では浦島太郎的な時間間隔の障害が起こります。
逆に、こうした放心状態のもとでは、一日が大変短く感じられるともいえます。
成人になってから解離性フラッシュバックなどを生じている人ですと、一日、一週間と言うものが「飛ばされてしまった」ように感じられたりします。
ちょっとした刺激(原発の外相体験に似た刺激)で、フラッシュバックがひとたび起こり始めると、一種の癖がついて、解離しやすくなるという困った現象も見られます。
これと並んで、子供のときの感情や情緒、例えばお母さんに対する欲求不満の感情が一生続いてしまうこともあります。
参考文献:斉藤学公演集<V>心の傷の癒しと成長